診療報酬は2年に一度見直しが行われており、現時点では2022年度の改定が最新。改定内容は看護師の業務内容等にも影響するため、随時最新情報を押さえておくことが必要です。

今回は、2022年度の診療報酬改定で看護師が知っておきたい6つのポイントと2024年度改定で期待される3つのポイントについて分かりやすく解説します。

診療報酬改定とは?

診療報酬とは、医療機関等が行う診療行為や医療サービスの対価として公的医療保険から医療機関等に支払われる報酬のことです。

そして、診療報酬の内容や点数を見直すのが診療報酬改定です。通常2年に一度、改定されます。

診療報酬を適切に見直すことで、医療機関等は提供した医療サービスに応じた報酬が確実に得られます。また、患者さんは診療費の1〜3割のみ自己負担することで安心して医療サービスを受けられるのです。

2022年度 診療報酬改定で看護師が知っておきたい6つのポイント

診療報酬の改定内容は、看護師の業務内容や勤務体制等にも変更が生じる場合があります。そこで、2022年度の診療報酬改定のポイントを知っておきましょう。

1. 急性期入院料の見直しに伴う重症度、医療・看護必要度の変更

新型コロナウイルス感染症の感染拡大や医療機関の対応を踏まえて、急性期一般入院料が見直されました。それに伴い、患者さんの状態に応じて適切な評価・医療が行われるように、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の評価項目が変更されています。

看護必要度の主な変更点は次の3つです。

  • 「心電図モニターの管理」は削除
  • 「点滴ライン同時3本以上の管理」は「注射薬剤3種類以上の管理」に変更
  • 「輸血血液製剤の管理」の評価点数は1点から2点に変更

看護必要度を入力する際には、変更点について理解した上で適切に評価するようにしましょう。

2. 重症患者への対応体制の強化

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、ICUなどでの重症患者への対応強化や人材育成が求められたことから、「重症患者対応体制強化加算」が新設されました。

これは、集中治療についての豊富な経験をもち適切な研修を修了した看護師や臨床工学技士が常時在籍していることや、高度かつ専門的な医療を提供できるような施設基準を満たしている場合に算定されます。

3. 専門性の高い特定看護師等の活用の推進

専門性の高い看護師として、認定看護師・専門看護師の他に特定行為研修を修了した看護師(以下、特定看護師)の評価基準が拡大されました。

背景にある理由の1つは、先ほどご紹介した重症患者への対応強化と人材を育成することです。基準を満たす特定看護師等は、重症患者への看護に必要な知識・技術を向上する目的でスタッフ向けの院内研修を年1回以上行うことが必要事項として定められています。

もう1つの理由は、医師の負担を軽減する対策として医師の業務の一部を専門性の高い看護師などに移行する「タスク・シフト/タスク・シェア」の動きがあるためです。

「精神科リエゾンチーム加算」「栄養サポートチーム加算」「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」などにおいて、これまで専門看護師や認定看護師のみが要件に規定されていましたが、今回の改定で特定看護師も追加されています。

4. 看護師の働き方改革の推進

看護師の働き方改革の推進として、「夜間看護体制加算」の見直し「看護補助体制充実加算」が新設されました。

「夜間看護体制加算」では看護業務の負担をより軽減するために、基準を満たす場合の加算点数がやや高くなりました。ただし、「11時間以上の勤務間隔を確保すること」または「連続する夜勤の回数が2回以下」のいずれかを満たすことが必須条件です。

「看護補助体制充実加算」の背景には、看護師の業務負担を軽減するために看護補助者の活用を推進する動きがあります。加算には、看護職員が看護補助者との業務分担・協働に関する研修を受けていることや、十分な体制を整備していることが必要条件です。

5. リフィル処方箋の活用

症状が安定している患者さんにリフィル処方箋を活用する仕組みが設けられました。

リフィル処方箋とは、一定期間の中で定められた回数内であれば、医師の診察を受けずに処方箋を反復利用できるものです。症状が安定している患者さんにとっては、医師の診察を受けずに薬局で薬を複数回処方してもらえるメリットがあります。

ただし、リフィル処方箋を利用できるのは最大3回まで。処方時には薬剤師による服薬管理が必要です。患者さん自身または薬剤師が症状の変化を認めた場合は、一定期間内であっても医療機関への受診が必要となります。

6. オンライン診療の拡大

近年、オンライン診療が広まっており、診療報酬の対象や基準が拡大しています。

これまでオンライン診療は、初診は対面での診察が必須であり、2回目以降の再診で診療報酬の算定が可能でした。今回の改定では、初診からオンライン診療が可能になりました。

また、患者さんに疾患や療養・予防について指導した場合に算定する「検査・処置等を伴わない医学管理料」が9種類から20種類へ増加しています。例えば、「ウイルス疾患指導料」「皮膚科特定疾患指導管理料」「がん患者指導管理料」などが追加されました。

今後も、オンライン診療の対象や基準はますます広がっていくでしょう。

2024年度 診療報酬改定で注目される3つのポイント

2024年度の診療報酬改定に向けてすでに協議が進められており、注目されるポイントをいくつかご紹介します。

1. 第8次医療計画に基づく内容修正

2024年からスタートする第8次医療計画に伴って、診療報酬の改定内容も検討されています。

医療計画とは、医療法に基づいて効率的な医療提供体制を確保するための計画です。6年毎に区切られて計画が策定されており、第7次医療計画は2023年で終了します。

第8次医療計画では、増加している高齢者の救急対応が重視されています。そのため、2024年度の診療報酬改定では、高齢者の救急患者を受け入れるために各救急医療機関での役割を明確化することなどが期待されます。

2. 医療DXの推進

医療DXの推進についても期待される点です。

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、デジタル技術を利用することで生活をより良くする試みのこと。

2023年1月より運用が開始されている電子処方箋のさらなる普及の他、診療報酬改定に伴う算定システムへの導入電子カルテ情報の共有サービスなどが計画されています。

医療業界においても、デジタル技術が活用されてより便利になることが期待されます。

3. 医師の働き方改革の開始

2019年4月から施行されている働き方改革関連法は、新型コロナウイルス感染症の拡大により医師への適用が5年間猶予されていました。2024年度からは医師の働き方改革がこれまで以上に重視されます。

先ほどもご紹介した「タスク・シフト/タスク・シェアの推進により、医師の業務でシフトできるものは看護師に振り分けるという動きも予測されます。2024年度の診療報酬改定では、看護師にどのような役割が期待されるのかが注目ポイントです。

まとめ

診療報酬改定は2年に一度行われており、看護師の業務内容や勤務体制等にも変更が求められることがあります。

高齢化や重症患者への対応、医師の働き方改革に伴うタスク・シフトなどにより、看護師の専門性がますます求められるでしょう。

最新の診療報酬改定をチェックして、看護業務に活かしていきましょう。