今回の医院インタビューでは、大阪市西区新町にあるみんな幸せクリニック院長西田拓司先生にお話を伺いました。心斎橋・四ツ橋駅の近くの都心部にありつつ、新町北公園の前で緑もある落ち着いた空間となっています。

院長先生のご紹介をお願いします。

「みんな幸せクリニック」院長の西田拓司と申します。2006年和歌山県立医科大学医学部医学科を卒業しました。それから耳原総合病院で研修医となり、2008年から2年間総合内科医を勤めました。総合内科医は幅広く様々な病気を診ることができるということで魅力を感じていましたし、何の病気かわからないところから診るということにもやりがいを感じていました。しかし、総合内科は主にプライマリーケアで、最終的には専門医の先生に紹介するスキマ産業で最後まで患者さんと伴走することができない物足りなさも感じていました。

循環器科に進む

研修医のときに、狭心症の患者さんを外来で診る機会がありました。先輩の先生に相談したところ、その日は問題ないというアドバイスをいただき、薬を処方して帰宅してもらいました。ところが、次の日にその患者さんは心肺停止で救急外来に運ばれてきてしまいました。全力を尽くしましたが、その患者さんは帰らぬ人となってしまいました。
もし、はじめに循環器の先生が診ていたらこの患者さんは助かったのではないかと思い、
三日三晩泣きましたし医者を続ける自信を失いかけました。

でも、それではなくなった患者さんも浮かばれないと思い直して
2010年から循環器科に進むことを決めました。

心臓カテーテル手術もやり、循環器科は人の命を助けているという実感がありました。
しかし一方であまりにも忙しくて人をモノとしか見れなくなってきた自分にきづきました。

カテーテルで血管を拡げたら、はい、次、また次。流れ作業のようで

これを続けているうちに虚しさを感じるようにもなりました。自分が医師になった根本の理由はもともと人の幸せを追求したかったからです。

そんな疲れていた循環器内科時代、あるとき心不全だという方を診ていたのですが、なかなか改善しませんでした。その方は実は大腸がんの肺転移で肺に水がたまり(胸水)、心不全のようになっていました。いわゆるステージ4の癌です。こうなれば普通はオピオイドという麻薬系の薬を用いて楽にいってもらうことになりますが、この患者さんはそれを頑なに拒否し、最後まで苦しみぬいて亡くなりました。それがあまりにも壮絶でした。

呼吸器科に進む

循環器領域には、ほぼがん疾患が無いため、循環器科はゆっくり人を看取るということをあまり経験していませんでした。たくさんの死を目の前でみて受け入れていかなければ、一人前の医者にはなれないと思いました。そこで自分の成長を求めて転科します。

いろいろ悩み途中消化器なども経験しましたが、最終呼吸器に進むことにしました。

呼吸器には、がんも感染症もアレルギーもあり、幅広く診ていく必要がありますし、何より患者さんの人生にゆっくりと寄り添っていくことができるからです。

ただ呼吸器疾患はなかなか治りません。

目まぐるしく動き、命を助ける循環器科

ゆっくりと向き合い、人生に寄り添う呼吸器科

二つの科のスペシャリストになり、両極を知ることができたのはとても良い経験になりました。

循環器科と呼吸器科両方を経験するのはとても珍しいことだと思います。
医者になって10年目に転科すると、ストレートで呼吸器科に進まれてる
何歳も年下の医師に教えてもらうこともでてきます。
そのときに謙虚な姿勢であったり、足りないことを素直に認めるということを学びました。

病気と幸せの関係について

たくさんの患者さんを診てきて、同じ病気でも治る人と治らない人がいることが疑問でした。そして、心が安定している人は治りやすく、心が不安定で病気をネガティブに捉える人は治りづらく、また不幸になりやすいということがわかってきました。

人がそれぞれ自分らしく幸せに生きることが、病気を治す一番の方法です。

病気を治したいと思うのは、「痛い」「つらい」というところがスタートですが、その裏には別の思いが人それぞれあります。”おいしいものを食べたい”、”家族と一緒に笑っていたい”、”病気のことを心配せず、好きなことをしたい”。つまり、幸せになる過程として病気を治すんだということに気づかされました。
大切なのは病気を治すことより、その向こう側の幸せに生きることではないかと考えるようになりました。

みんな幸せクリニックをオープン

このような思いを持って、2021年3月、大阪西区新町に「みんな幸せクリニック」をオープンしました。診療科目は内科一般ですが、呼吸器と循環器に特に強い専門クリニックです。

このクリニックの名称は特徴的ですよね。これは、”幸せ”になるのを目的としてその手段として病気を治す、という思いで付けた名称です。”みんな幸せ”って助詞がないことも「みんなが幸せ」「みんなと幸せ」「みんなで幸せ」と様々な意味に捉えることもできます。

病気が治るというのは、マイナスがゼロになることですが、「みんな幸せクリニック」では、病気を治したあとに、幸せな生活を送るというところまで見守りたいと思っています。

みんな幸せクリニックのロビー 落ち着いた空間です

みんな幸せクリニックは心斎橋駅、四ツ橋駅から近く、都会の中にあります。一方で、目の前に公園があって緑も多いです。子供も多く、おしゃれなカフェや素敵なお店がたくさんあって、町が元気です。コロナの前には盆踊り大会が開かれていたり、歴史の古いサムハラ神社があったりと、新旧混じる素敵な町のクリニックです。

患者さんは若い方が多く、30代-50代の方が中心です。この町で長く診療を続けることによって、地域に根差したクリニックになっていきたいと思っています。

地域に根差したクリニックを目指しています

極に振れないことが大切

みんな幸せクリニックでは、統合医療を用いています。西洋医学はもちろん、東洋医学や、周波治療なども取り入れ、その人に最適な医療をめざしています。

現在の医学は西洋医学に偏っています。西洋医学は救急や外傷にはとても効果的で現在の主流になっています。一方で、慢性疾患には弱いのが問題です。例えば高血圧。血圧の薬を飲めば、そのときは症状を抑えることができますが、根本的には解決できません。
また、検査値には出にくいような疾患(自律神経失調症など)にもあまり対応することができません。そのような意味では東洋医学や周波数治療は慢性疾患にも効果を発揮します。

でもどちらにも偏ってしまうと問題です。
西洋医学だけ、東洋医学だけ、と偏ることのない医療を目指しています。

極に振れない・偏らないようにする、ということが大切です。

クリニックカフェ「彩つなぎ」

クリニック診療は面白い反面少しさみしい面もあります。
クリニックは治してよくなってしまったら患者さんが来なくなり絆がきれてしまうからです。普通企業なら、良い結果を出したらそこからご縁が出来ていくものですが、クリニックは良くなった人が戻ってくることはありません。そうは言ってもずっと治らなければ患者さんは満足されず離れてしまいます。本当はずっと一緒につながっていたいのに・・・。

そんなさみしい思いをちょっと解消するために
みんな幸せクリニックにはクリニックカフェを併設しました。
「ちょっと身体に良いものを知れる体験型カフェ」ということをテーマにしています。

しかし、この地区にはおしゃれなカフェがたくさんあり、「身体に良いものを」というだけでは少し特徴がないかな、と思い「体験型カフェ」にしました。

外来の三分診療では食事指導をするのは難しいので、カフェで食事指導を行っています。

またストレス解消のカウンセラーがいて、カフェの奥では整体・針灸の施術を受けることができます。カフェのオーダー中にこのような体験ができます。

クリニックカフェ「彩つなぎ」



看護師さんも休憩中にカフェのテラスで本を読んでいたりと、優雅な空間になっています。

もちろん患者様が多いのですが、最近では一般のお客さんもいらっしゃいます。

クリニックに行くというと、少しネガティブなイメージがありますが、カフェも併設していることで楽しんでクリニックに来てほしいと思っています。マイナスをゼロにするのがクリニックなら、ゼロからプラスにしていくのがカフェというコンセプトです。

そこでは、卒業した患者さんにも会えたら楽しいという自分の思いも入っています。

医者や看護師単独の力では病気は治らない時代になっています。自分の思う方向に患者さんをコントロールするのではなく、本来の道を進めるように戻すのが医者の役割だと思っています。患者さんが、本来の道からずれてしまったことに気付くことが大切です。
そんな真ん中の思いを持ちながら、これからも素晴らしいと思っていただけれる本質的な

医療を提供しつづけていこうと思っています。