高齢者に起こりやすいスキントラブルの一つであるスキンテア(皮膚裂傷)。「皮膚に貼付していたテープを剥がす時に皮膚が剥がれた」「ベッド柵などに腕や足が擦れて皮膚が裂けた」など一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
スキンテアについてしっかり理解しておかなければ、適切に対処できず症状の悪化につながってしまうかもしれません。
今回は、スキンテアの概要や予防法、発生後のケアについて解説します。
スキンテアって何?
スキンテア(Skin Tear:皮膚裂傷)は「摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)」*1 のことです。
主として高齢者に生じやすく、医療機関や介護施設、在宅などどのような場所でも起こり得る可能性があります。
例えば、以下のような時にスキンテアが発生することがあります。
- 医療用テープや絆創膏を剥がす時
- 転倒・転落時
- ベッド柵にぶつけた時
- 車いすやベッドなどへ移動する時
- 更衣で衣服が擦れる時
- 体位交換やリハビリで身体を支持する時
高齢者など皮膚が脆弱化している人は、日常動作の中で生じる些細な摩擦やずれによって皮膚が裂けてしまうため注意が必要です。
スキンテアと褥瘡の違い
スキンテアと褥瘡は症状がよく似ているため区別しづらい部分もありますが、大きな違いがあります。
褥瘡は、持続的に同じ場所に圧迫やずれが生じることで起こります。皮膚が長時間圧迫されることで、酸素や栄養が滞り組織が壊死した状態です。褥瘡は悪化すると骨の近くまで病変が及びます。
それに対して、スキンテアは一過性の摩擦やずれなどによって起こります。いわゆる外傷性損傷であり、褥瘡に比べて傷は浅いのが特徴です。
スキンテアと褥瘡では処置が異なるため、発生要因や創の状態などから見極めることが重要です。
スキンテアを起こしやすいのはどんな人?
スキンテアは年齢を問わずどのような人にも生じますが、スキンテアを起こしやすい人には特徴があります。*1
スキンテアの多くは皮膚が脆弱化した高齢者に起こりやすくなっています。また、抗凝固薬や長期のステロイド薬の使用、化学療法、放射線療法、透析などによる治療中、低栄養などは皮膚が弱くなりやすいです。
皮膚の状態として、乾燥してシワが多く薄い状態や紫斑のある状態はスキンテアのリスクが高くなります。また、浮腫や水疱がある場合も、皮膚が引き伸ばされて薄くなっているためスキンケアを起こしやすい状態です。
このように皮膚が脆弱な状態は、軽い外力が加わるだけで皮膚が容易に裂けてしまうため注意が必要です。
スキンテアの予防法
スキンテアは些細な動作で生じやすく、皮膚を損傷すると強い痛みを伴います。スキンテアをできるだけ防ぐためには、普段から対策できる保湿・外力からの保護・身体の支持・栄養について理解しておきましょう。
1. 皮膚状態を改善する保湿
スキンテアの予防として特に大切なのが保湿です。
皮膚の乾燥や弾力性が改善されると、スキンテアのリスクは低減します。
皮膚に摩擦やずれが生じないように十分に配慮しながら、入浴などで皮膚を清潔に保ち、保湿するようにしましょう。低刺激性のローションなど伸びのよい保湿剤を使用して、1日2回以上、毛の流れに沿って押さえるように優しく塗るとよいでしょう。
2. 外力からの保護
スキンテアは摩擦やずれなどの外力が加わることで生じるため、外力から保護することも重要です。
スキンテアの発生リスクが高い医療用テープについては、皮膚被膜剤を使用してから貼付し、除去する際には剥離剤を使用してテープをゆっくりと反転させながら剥がすとよいでしょう。
外力から皮膚を保護するために、長袖の衣服を着用し、必要時はアームカバーやレッグカバーを装着することも有用です。
ベッド柵や家具の角にカバーや衝撃材をつけるなど、環境を整えることも大切です。
3. 外力を少なくする身体の支持方法
体位交換やリハビリなどで身体を支持する際にも気をつける点があります。
脆弱な皮膚では、介助者が身体を支持しただけでもスキンテアが起こることがあります。
上肢や下肢を支持する時には、掴まず、下から支えるように保持しましょう。その際、介助者が手を開くと、指の圧力が局所に集中してしまうため、手を閉じて大きな面で支えるとより効果的です。
4. 皮膚状態を根本から高める栄養管理
低栄養はスキンテアのリスクになるため、栄養状態をよくすることも重要です。
バランスのよい食事摂取を心がけ、特に皮膚組織の再生に必要となるタンパク質(アミノ酸)を積極的にとることで皮膚の脆弱性を改善できます。
脱水状態は皮膚が乾燥して脆弱になりやすいため、脱水にならないように水分摂取を促すことも大切です。
食事や水分摂取量が少ない人には、栄養補助食品などの活用を勧めるとよいでしょう。
スキンテアが発生した時のケア方法
スキンテアが発生した時には、悪化を防ぐために迅速に対応することが重要です。
創の状態によって使用するドレッシング剤などは異なりますが、以下の手順で対応するようにしましょう。
- 圧迫して止血する
- 生理食塩水または微温湯でしっかりと洗浄する
- 皮弁を元の位置に戻せる場合は戻す
- 創の状態によって非固着性のガーゼやドレッシング剤を貼付する
- 固定が必要な場合は、皮膚に直接テープを貼らず、筒状包帯などを用いる
ドレッシング剤は、剥がす時に負担の少ない非固着性のもの(出血がある場合はアルギン酸塩、出血や感染がない場合はシリコーン製など)を選択します。透明でないドレッシング材は、剥がす時に皮弁固定を妨げないように矢印で剥がす方向を記すとよいでしょう。
まとめ
スキンテアは皮膚が脆弱な高齢者に生じやすく、医療機関や介護施設、在宅などどのような場所でも起こり得る可能性があります。しかし、スキンテアの起こりやすい状態を理解し普段から対策しておくことで、発生をできるだけ防ぐことが可能です。
スキンテアのケアについては今後もアップデートされる可能性があるため、最新情報をチェックして、看護ケアに役立てましょう。