子宮頸がんの予防接種で知られるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン。以前は接種後の体調不良により接種を控える動きがありましたが、接種推奨の再開や9価ワクチンの公費対象により予防の選択肢が広がっています。
他の先進国と比べて日本のHPVワクチン接種率は依然として低いため、子宮頸がんの予防をより推進するためには看護師の対応が求められています。
今回は、HPVワクチンの最近の動向や看護師に求められる対応について解説しますので、ぜひこの機会に理解を深めてください。

HPVワクチンとは?

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、HPV感染をきっかけに発症する子宮頸がんなどを予防するもの。HPVワクチンの作用や種類などについて理解しておきましょう。

そもそもHPVってどんなウイルス?

HPVは実はごくありふれたウイルス。HPVは主に性交渉によって感染しますが、性交渉の経験がある男女50〜80%は生涯で一度は感染するといわれています。HPVに感染しても90%は免疫によって自然治癒します。
HPVには200以上の種類(型)があり、感染してもほとんどの型は問題を起こしません。しかし、一部の型は子宮頸がん、中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの発生に関わっているのです。

HPVワクチンの予防効果と3つの種類

HPV感染により発症が特に多いのが子宮頸がん。その原因となる型の感染を防ぐのがHPVワクチンの役目です。

ただし、HPVワクチンはすでに感染しているウイルスを排除する力はありません。つまり、HPVワクチンは性交渉の経験がない人に接種することで最大の予防効果が得られるのです。

現在、日本で使われているHPVワクチンは3種類あります。子宮頸がんのリスクが高い16型と18型を中心に、ワクチンによって感染を防ぐことのできるHPV型の種類が異なります。

・2価ワクチン(サーバリックス®︎):16・18型
・4価ワクチン(ガーダシル®︎):16・18・6・11型
・9価ワクチン(シルガード9®︎):16・18・31・33・45・52・58・6・11型

子宮頸がんの原因となる型のうち、2価・4価ワクチンでは64.9〜71.2%、9価ワクチンでは81.0〜90.7%の感染を防ぎます*1

また、ワクチンの種類によって投与回数と間隔が異なります。

ワクチンの作用と副作用を十分に理解したうえで自分にあう種類を選ぶことが大切です。

HPVワクチンの安全性は大丈夫?

HPVワクチン接種後の体調不良が一時問題になりましたが、その後に数多くの調査が行われました。

厚生労働省研究班を含むどの調査においても「接種後の症状とHPVワクチンの因果関係は認められない」と報告されています*2*3

さらに、WHOはHPVワクチンの成分とは関係なく「予防接種ストレス関連反応」があることを示しています。

これは接種前〜直後におこる①急性ストレス反応や②血管迷走神経反射、接種後数日以内の③解離性神経症状反応があり、接種に関わるストレスが原因になると考えられているのです。

こうした議論を経て、厚生労働省は2021年よりHPVワクチンの勧奨を再開しました。

キャッチアップ接種と公費になった9価ワクチンで接種率は上昇傾向

HPVワクチンの接種勧奨を控えていた約9年間に接種する機会を逃した女性を救済するため、キャッチアップ接種が行われています。

次のような条件に当てはまる人は、2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間であれば無料で接種できます。

平成9年度〜平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日〜2007年4月1日)の女性

過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方

また、2023年4月より9価ワクチンのシルガード9も定期接種の対象になりました。そのため、対象年齢の人は公費(無料)で接種することが可能です。

HPV接種率は日本では令和元年に1.9%であり、カナダやイギリス、オーストラリアなどの約80%に比べるとかなり低くなっていました*4 。しかし、キャッチアップ接種などの対応によって国内の接種率は徐々に上がってきています。

子宮頸がんを予防するためにHPVワクチンの普及がますます期待されています。

HPVワクチン接種で看護師に求められる対応は?

HPVワクチン接種を安心して受けるためには、患者さんの側にいる看護師の対応が重要です。

予防接種ストレス関連反応は10代の女性や注射で不快な経験をしたことがある人などに多くみられます*5 。そのリスク要因はHPVワクチン定期接種の対象にも該当するため、看護師はしっかりと予防に努めましょう。

① HPVワクチンについての正しい情報提供

看護師はHPVワクチンについての正しい情報をもとに患者さんに説明しましょう

インターネットなどたくさんの情報があり、接種するべきか判断するのは難しいもの。患者さんの中にはHPVワクチン接種後の体調不良について不安が残っている人もいます。

専門的な知識をもつ医療従事者からの情報は、患者さんが信頼を抱きやすい傾向にあります。看護師はHPVワクチンについての知識をアップデートし、接種を迷っている方や健康診断・受診に来た方などに対して正しく情報提供をしましょう。

② 接種前後の緊張や不安を和らげる対応

HPVワクチン接種前〜接種後は、患者さんの緊張や不安をできるだけ和らげることが大切です。

HPVワクチンに限らず予防接種全般で患者さんは緊張を伴いやすいもの。また、予防接種ストレス関連反応は不安や恐怖心などのストレスが影響しているため、次のような対応で患者さんの不安を軽減することが重要です。

看護師は自信を持ちリラックスして対応する
傾聴を心がけ、患者さんの気持ちを認める
患者さんや保護者とコミュニケーションをとる
静かで周りに人がいない環境を整える
(不安が強い場合は信頼できる人を同席させる)
座位や仰臥位で接種する

接種が終わったら「よく頑張ったね」と笑顔で伝えると緊張が解れやすく、次の予防接種への不安軽減にもつながります。

③ 副反応や予防接種ストレス関連反応が生じたときの対応

接種後に体調不良が生じた際は、看護師が迅速・冷静に対応しましょう

接種直後の反応として、まずはアナフィラキシーと急性ストレス反応・血管迷走神経反射を鑑別することが大切です。皮膚や呼吸器症状が主に異なるため、注意して観察しましょう。

アナフィラキシーの場合は一次救命処置、急性ストレス反応・血管迷走神経反射の場合は安静にしながら緊張や不安を和らげるように穏やかに対応しましょう。

帰宅後に体調不良が生じる可能性もあるため、その場合の対処法を伝えることも重要です

各都道府県にHPV予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関が設置されています。まずはかかりつけ医で対応し、専門的な対応が必要な場合は協力医療機関へ相談できることも知っておくとスムーズに対応できるでしょう。

HPVワクチンについて理解を深め、看護に役立てよう!

HPVワクチン接種は、HPV感染を防ぎ子宮頸がんなどの予防効果が期待できます。

HPVワクチンの定期接種の対象は思春期の女性であり、接種に対して不安や緊張を強く感じてしまうことも。患者さんと接する機会が多い看護師が落ち着いて冷静に対応することで、患者さんは安心して接種できるでしょう。

HPVワクチンについての知識をアップデートして、自信をもって看護を行いましょう!

「育児などでブランクができてしまった」「復職先をどこで探したらいいかわからない」

看護師の仕事が好きなのに、今の自分にはできないと諦めていませんか。

クーラなら、多様な職場からあなたにぴったりの短期バイトが見つかります!

あたらしい職場でも安心して初日が迎えられる、各施設オリジナルの事前オンライン研修も利用できる。お試し転職として、職場との相性や人間関係を確かめてもOK。

あなたの看護を待っている人がいます。これまでの経験を活かして「あたらしい看護の働き方」はじめてみませんか。

今なら無料登録でAmazonギフトがもらえる!登録はこちら

*1:厚生労働省「9価ワクチン接種のお知らせリーフレット(定期接種版)」
*2:厚生労働省研究班(祖父江班)「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究」
*3 :Suzuki S, et al: No association between HPV vaccine and reported post-    vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya Study.    Papillomavirus Res. 5: 96-103, 2018.
*4 :厚生労働省「HPVワクチンについて知ってください 子宮頸がん予防の最前線」
*5:川崎市健康安全研究所(2022)予防接種ストレス関連反応 (ISRR) 予防接種プログラム責任者及び医療関係者のための予防接種ストレス関連反応 (ISRR) の予防、発見及び対応の実施マニュアル