「電解質輸液はどのように使い分けるんだろう?」「細胞外液や維持液の違いは何?」と疑問に思っていませんか?
看護の場においてよく扱う点滴の一つが電解質輸液。しかし、電解質輸液の種類は多く、看護師がそれぞれの輸液製剤の特徴や使い分けを理解するのは難しいものです。
今回は、看護師が知っておきたい電解質輸液の種類と違いについてわかりやすく解説します。
基本をおさらい!輸液の代表的な種類とは?
そもそも輸液製剤には一般的に3つの種類があります。
- 電解質輸液:水・電解質の補給が目的
- 栄養輸液:糖質・脂肪・アミノ酸などの栄養補給が目的
- その他の輸液(浸透圧利尿剤・血漿増量剤など):膠質浸透圧や循環血漿量の保持が目的
電解質輸液は外来や手術患者さんにも使われるため、看護師が扱う頻度は最も高い点滴製剤です。
電解質輸液はその成分や組成の違いによって用途が異なり、誤って投与することで副作用が生じる可能性も。患者さんへ安全に投与するために、看護師はそれぞれの輸液の特徴をしっかりと理解しておくことが必要です。
復習しよう!水分と電解質による浸透圧のしくみ
細胞内外では水分と電解質などの働きによって恒常性を保っています。
浸透圧とは、濃度の異なる水が半透膜を通して濃度の低い方から濃度の高い方へ移動する力のこと。
細胞膜は水分を自由に通しますが、電解質はほとんど通さないため、水分のみが移動して細胞内液と細胞外液の濃度を一定に保っています。
しかし、出血や脱水、腎機能異常などが生じると、細胞内外の水分や電解質のバランスが乱れてしまうことも。
細胞外液の濃度が細胞内液より低くなると、水分が細胞内に移動します。逆に、細胞外液の濃度が細胞内液より高いと、細胞内の水分が細胞外に移動することになるのです。
電解質輸液の種類とそれぞれの違いは?
電解質輸液は、浸透圧のしくみを応用して水・電解質を補給するために用いられるもの。看護の場でよく使われる電解質輸液の種類には、「等張電解質輸液」と「低張電解質輸液」があります。
1. 等張電解質輸液
等張電解質輸液は、電解質濃度が血漿とほぼ同じくらいの輸液です。等張電解質輸液を投与すると、細胞内へは移動せずに細胞外にのみ留まり細胞外液量を増やします。そのため、「細胞外液補充液」とも呼ばれています。
等張電解質輸液は、出血などによる循環血液量が減少したときや、ショックにより血圧が低下しているときなどに用いることで、血管内や組織間に水分・電解質を補給できるのです。
<等張電解質輸液の種類>
- 生理食塩液:ナトリウムとクロールイオンのみ含む
- リンゲル液:ナトリウム、クロールに加えてカルシウムとカリウムイオンを配合
- 乳酸リンゲル液:リンゲル液に乳酸ナトリウムイオンを配合
(ラクテック®︎、ソルラクト®︎など)
- 酪酸リンゲル液:リンゲル液に酪酸ナトリウムイオンを配合
(ヴィーン®︎、ソルアセト®︎、ソリューゲン®︎など)
- 重炭酸リンゲル液:リンゲル液に重炭酸イオンを配合
(ビカネイト®︎、ビカーボン®︎など)
生理食塩液と乳酸(酪酸)リンゲル液はどのように使い分けるの?
生理食塩液と乳酸(酪酸)リンゲル液は看護の場でよく使われる輸液ですが、用途によって使い方が異なります。
生理食塩液はナトリウムとクロールイオンのみのシンプルな組成。
リンゲル液と異なりカリウムイオンが入っていないため、腎機能や心機能などの状態が分からない患者さんにも投与できます。
ただし、生理食塩液はナトリウムとクロールイオン濃度が血漿よりも高いため、大量に投与することで代謝性アシドーシスを起こす可能性がある点は注意が必要です。
それに対して、乳酸(酪酸)リンゲル液は乳酸(酪酸)ナトリウムイオンを配合して血漿の組成に近づけた輸液製剤。生理食塩液に比べてナトリウムやクロール過剰になりにくく、代謝性アシドーシスの是正効果があるのが特徴です。
2. 低張電解質輸液
低張電解質輸液は、電解質濃度が血漿より低い輸液です。そのため、細胞外液だけでなく細胞内液にも水分・電解質を届けられます。
低張電解質輸液は、細胞内と細胞外に水分・電解質を届けられるため、食事・水分摂取が不足している患者さんや脱水のときの水分・電解質補給として用いられることが多いです。
低張電解質輸液には、1号液〜4号液があり「維持液類」とも呼ばれています。
1〜4号液は何が違うの?
1〜4号液は、生理食塩液と5%ブドウ糖液の配合によって作られたもの。1号液に近いほど生理食塩液の割合が多く、4号液に近いほど5%ブドウ糖液の割合が多くなります。
また、1〜4号液に含まれる電解質が異なることから、次のような特徴があります。
- 1号液(開始液):カリウムが入っていないため、腎機能や心機能が不明な患者さんにも使用可能。
(ソリタT1号®︎、リプラス1号®︎、KN1号®︎など)
- 2号液(脱水補給液):ナトリウムとともにカリウムも投与したい脱水時に用いられる。ただし、最近ではあまり使用されていない。
(ソリタT2号®︎、KN2号®︎など)
- 3号液(維持液):1500〜2000mlの投与で1日に必要な電解質と水分を補給できる。
(ソリタT3号®︎、KN3号®︎、ソルデム3®︎、フィジオ35®︎など)
- 4号液(術後回復液):カリウムは入っておらず、電解質濃度が低い輸液。腎機能が未熟な小児などに用いられる。ただし、術後にはあまり使用されない。
(ソリタT4号®︎、KN4号®︎、ソルデム6®︎など)
輸液を行う際には、どの部分に水分・電解質を補給するのかという目的をイメージしてみてください。
用途によって輸液の種類を理解することで、患者さんの病態や輸液の作用を踏まえた観察ができるようになるでしょう。
電解質輸液の特徴を理解して看護に役立てよう
電解質輸液は水分と電解質を補給するために用いられ、輸液の種類によって配合や作用が異なります。看護の場で電解質輸液はよく用いられるため、その特徴をしっかりと理解して、患者さんへの投薬を行うことが大切です。
電解質輸液についての知識を深めて、ぜひ明日の看護に役立てましょう。
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参考文献:『これならわかる!輸液の基本と根拠』木下佳子, ナツメ社