「訪問看護の介護保険と医療保険の違いって何?」「訪問看護師として働くうえで違いをわかりやすく知りたい」と思っていませんか?
訪問看護は介護保険が適用となる場合と医療保険が適用される場合があります。
どちらの保険が適用になるのかは利用者さんの年齢や病状などによって異なり、看護師が判断するのは難しいもの。
今回は、訪問看護で適用される介護保険と医療保険の違いなどについて、わかりやすく解説します。
そもそも介護保険と医療保険とは?
介護保険は、40歳以上で介護が必要な人が加入する社会保険です。要介護認定を受けることで、費用の自己負担を抑えて介護保険サービスを利用できます。
医療保険は、病院などでの治療に備えて、すべての人が加入を義務づけられている保険。医療機関を受診したときに、医療費の自己負担を抑えられます。
訪問看護で適用される介護保険と医療保険の違いは?
訪問看護では、介護保険が適用される場合と医療保険が適用される場合があります。これらの主な違いは3つあります。
1. 対象となる利用者の違い
訪問看護で介護保険と医療保険のどちらが適用されるかは、利用者の年齢や疾患・状態によって異なります。
介護保険の場合、要介護または要支援と認定されている方が対象です。
医療保険の場合は、子どもから要介護認定を受けていない高齢者までが対象となります。尚、要介護認定を受けている人でも、厚生労働大臣が定める疾患等(別表7)にあてはまる場合や病状の悪化等により特別指示(特別訪問看護指示書)がある場合などは、医療保険が優先されます。
2. 支給限度額や自己負担割合の違い
次に、介護保険と医療保険では支給限度額と自己負担割合が異なります。
支給限度額は、介護保険では要介護度によって決められています。そのため、支給限度額の範囲内では介護サービス利用料の自己負担を抑えられますが、範囲を超えたサービスは全額自己負担となるため注意が必要です。
医療保険の場合、支給限度額はありません。医療保険で訪問看護を利用すると、医療費の1〜3割が自己負担となります。
自己負担割合については、介護保険では基本的に1割負担となりますが、65歳以上で所得が一定以上ある人は2〜3割負担。医療保険では、年齢によって自己負担割合が異なります。
3. 訪問時間と訪問回数の違い
訪問看護の介護保険と医療保険では、訪問時間や回数が異なります。
介護保険の場合、訪問回数に制限はありませんが、ケアマネジャーが作成するケアプランによって訪問時間・回数が設定されます。支給限度額が決められており、デイサービスや訪問介護などのサービスも併用する場合、訪問看護の利用時間・回数は限られてしまうことが多いです。
医療保険の場合は、原則として週3回まで、1回の訪問につき30〜90分訪問できます。ただし、厚生労働大臣が定める疾患等(別表7)や特別指示がある場合は、週4回以上の訪問が可能です。
訪問看護で介護保険と医療保険は併用できるの?
訪問看護では、介護保険と医療保険が同時に適用になることはありません。
たとえば、介護保険で訪問看護を利用している方の病状が悪化した場合。主治医に特別訪問看護指示書を発行してもらうことで、医療保険に切り替えて対応します。
訪問看護では介護保険と医療保険はどちらが優先されるの?
利用者さんの状態によって介護保険と医療保険のどちらが適用になるのか判断するのは難しいもの。フローチャートを用いてわかりやすくご紹介しますので、ぜひご活用ください。
特定疾患とは?
特定疾患とは、加齢による心身の変化に起因する疾患のこと。40歳以上65歳未満で16特定疾患があり、要介護認定を受けている人への訪問看護は介護保険が適用されます。
<16特定疾患>
- がん末期
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
厚生労働大臣が定める疾患等(別表7)とは?
厚生労働大臣が定める下記の疾患や状態にあてはまる場合は、医療保険で週4回以上の訪問看護が利用できます。
<厚生労働大臣が定める疾患等(別表7)>
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
【覚えておきたい①】特別訪問看護指示書を受けたときは医療保険が適用
特別訪問看護指示書とは、利用者さんの病気が増悪したときや末期の悪性腫瘍以外の終末期など、主治医が頻回な訪問が必要だと判断した場合に発行されるもの。この場合、14日間は医療保険が適用され、週4日以上の訪問が可能となります。
ただし、特別訪問看護指示書は原則として月に1回しか発行できません。
【覚えておきたい②】精神科訪問看護は医療保険が適用
認知症以外の精神疾患がある人への訪問看護は、基本的に医療保険が適用されます。
精神科訪問看護は、精神科を専門とする医師の指示により通常は週3日まで訪問が可能。体調が悪化した場合は、週4回以上訪問できる精神科特別訪問看護指示書が発行される場合もあります。
ただし、通常の訪問看護と精神科訪問看護は併用できません。たとえば、精神科訪問看護を医療保険で利用していた方が、認知症や要介護状態になった場合は介護保険に切り替えることになりますので覚えておきましょう。
介護保険と医療保険の違いを知って訪問看護に活かそう
訪問看護で適用される介護保険と医療保険は、年齢や疾患などの条件が決められており、支給限度額や訪問回数が異なります。
また、利用者さんの病状や要介護度は変化するもの。介護保険と医療保険の適用についてきちんと理解しておけば、利用者さんの状況にあわせてしっかりと説明できます。
訪問看護師として自信をもって対応するためにも、基礎的な知識をおさえておきましょう。
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参考文献:厚生労働省「訪問看護のしくみ」